企画を考える人のための“ネジの外し方”入門
企画を考えるときって、ついつい“正解”を探してしまいがちですよね。
でも実際、心を動かしたり、斬新なアイデアって、ちょっとネジの外れたところから生まれたりもするものです。
今回はディレクター目線での“企画・発想の考え方”として、常識を外してアイデアを広げるための「ネジの外し方」を紹介しようと思います。
1. 「正解」を探すより、“ずれ”を楽しむ
たとえば、建設会社の採用サイトをつくるというプロジェクトがあった場合を考えてみましょう💡
まず最初の発想としては、
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業界の前提:事故ゼロや法令遵守は“存在理由レベル”の重要項目。まず安全性に触れないと不安を与えてしまうのでは。
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実績で語りやすい:受注件数・資格保有者数・施工年数など、数値化しやすく社内合意も取りやすい。
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ベンチマークの影響:同業の大手サイトが同じ枠組みで語っているため、“正解テンプレ”に見えてしまう。
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リスク回避の心理:「攻めの表現」よりも、無難で誤解の少ない表現を選びたくなる。
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採用でも効きそうに見える:「安定している会社に入りたい」という候補者ニーズを、そのまま“信頼・技術”で満たせると考えがち。
この結果、「安全・信頼・技術力」を全面に出そうとします。
悪くはないのですが、この思考はあるあるですよね。
そして次の段階では、「明日を支える技術」、「このまちの安全を築く」みたいな、どこかで聞いたことがあるようなキャッチコピーを考えてしまいがちです。
でも、あえて“真面目”を少しずらした場合。たとえば、
「泥だらけで帰るのが、ちょっと誇らしい。」 ──こんなメッセージで、現場のリアルさと仕事の誇りが伝わる。
カッコつけすぎない等身大の表現が、見る人の共感を呼んだりもします。
“ずらす”とは、「みんなが良いと思う方向」から少し角度を変えてみること。
真面目さの中に“人間くささ”を入れるだけで、印象がガラッと変わったりもします。
2. 他業界の“成功パターン”を転用してみる
企画に行き詰まったときは、「まったく別の業界」を参考にしてみるのもオススメです。
たとえば、飲食店のメニュー構成を見て、それを美容院のサービス紹介に応用してみましょう。
「前菜🥗(=カット💇🏻♀️)」→「メイン🍖(=カラー💁🏻♀️)」→「デザート🍨(=ヘッドスパ💆🏻♀️)」
という流れをページ構成に置き換えるだけで、体験としてのメニューという新しい見せ方に変えることもできます。
あるいは、
ECサイトのレビュー欄を採用サイトに転用して、「社員がこの会社の好きなところをレビューする」
という構成にすれば、リアルな声で社風を伝えられたりもします。
他業界のアイデアを少し加えるだけでも、アイデアの幅は一気に広がります。
3. 視点を入れ替えてみる
アイデアを出すとき、“視点の位置”を変えてみるのもオススメです。
たとえば、ブランディングでよくある発想のずらし方:
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Before(よくある視点) |
After(視点を変える) |
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「お客様にどう見せるか」 |
「社員がどう誇れるか」 |
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「商品の魅力を伝える」 |
「使っている人のストーリーを語る」 |
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「サービスの機能を説明する」 |
「使う前と後の“変化”を描く」 |
思考が詰まったときに、どこから見るかを変えてみるだけで、アイデアが再び動き出すなんてことも!
4. 「掛け算」発想でアイデアを混ぜる
もう一段階ネジを外したいときは、“掛け算発想”が効きます。
たとえば
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「求人 × クイズ」:応募前に“自分に合う部署診断”を設置
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「製造業 × ミュージアム」:工場を“見学コンテンツ化”してブランド発信
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「病院 × カフェ」:医療の堅さに“やわらかい語り口”を加えることで安心感を演出
まったく違うジャンルの文化や表現をかけ合わせることで、「この会社、面白いな」と感じてもらえる体験に変わります。
発想の転換とは、“異物混入”を恐れない勇気・挑戦でもあります🧪
5. 最後に、ネジを“締め直す”
ネジを外すのは楽しい。考えるだけ、外すだけならタダです。
でも、外しっぱなしでは企画は形になりません。
気づいたら机の上にネジとアイデアだけが散らかったまま。
そんなんじゃ、お母さんに怒られちゃいますよね。
ここからが企画を考える人の腕の見せどころです。
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その“ずれ”は、誰の心を動かすのか?
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転用したアイデアは、自社の目的に合っているか?
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思いつきではなく、“実現できる筋道”を描けているか?
ネジを外して締め直す。その繰り返しが、発想の上腕二頭筋を育てるトレーニングになります。
まとめ
アイデアは真っ白な紙の上では生まれません。
日常や他業界、他人の視点に“自分の色”を混ぜていくことで、初めて動き出します。
🧠「真面目な企画ほど、1ミリだけふざけてみる」
🤔「当たり前をとことん疑ってみる」
👀「他業界をじっくりのぞいてみる」
次の企画会議では、コーヒー片手に、「ふざけた・ぶっ飛んだ案」から提案してみてはどうでしょうか。
意外とそこに、いちばん伝わる答えが眠っているかもしれませんよ。